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菅原圭 one-man live tour 2026 “B.G.M.” ライブレポート@東京・人見記念講堂 2026.5.23

 

菅原圭が「人生の背景で鳴る音楽」をテーマに作り上げた最新アルバム『B.G.M.』を引っ提げ、東京、大阪、名古屋を巡るツアーを開催した。初日となる5月23日、東京・人見記念講堂はもちろん満員御礼。すでにニューアイテムであるバングルライトを身につけたオーディエンスが、開演を待ち侘びる。客席の照明が落ち、鳥の囀りが聞こえるなか、3頭の蝶々が客席の上を優美に羽ばたき、浮遊する。その幻想的な世界観がステージ上から放たれるシンセサウンドに共鳴し、やがてバンドサウンドは1曲目の「mean」へとつながった。菅原圭のシルエットが紗幕に浮かび上がり、深く心の奥まで射抜くような歌声が響いていく。
 

ステージは2階建てのシェアハウスを思わせるセットで、菅原はじめバンドメンバーそれぞれが、キューブ状の部屋のなかで演奏するという面白い演出。背後には『B.G.M.』のタイトルロゴや、おなじみ、愛猫のふぅくんイラストのネオン管も飾られ、スタイリッシュながら、どことなく、菅原圭の家に遊びに来たようなあたたかい雰囲気。



そのセットも後押しして、この日のライブでは菅原圭をとても「近く」に感じられた。『B.G.M.』というアルバムを完成させたことによって、菅原のモードが少し変化したのかもしれない。2曲目に披露した「ORACLE」を聴いてそんなことを思った。オルタナティブなバンドサウンドに牽引されるように、菅原の「歌」が音源にも増して生々しく、力強く響いていく。とてもリアルな歌だ。さらに「夜の惑星」の豊かなグルーヴが会場中に伝播していく。紗幕の向こうの菅原のシルエットも気持ち良さそうに躍動する。



『B.G.M.』からの新曲がとにかく心地よく会場中に響く。青と黄色に光る客席のバングルライト(グッズをペンライトではなくバングルにしたのは、両手が空いて自由に楽しめるようにという菅原の思いから)の光も気持ちよく揺れる。菅原は「自分の部屋だと思って、リラックスして楽しんでくれたら」と、観客をさらに自身の音世界に誘うように語りかける。「ライムライト」、そしてライブアレンジバージョンの「シトラス」と1stアルバムからの楽曲でも、この夜の菅原の歌声は格別にグルーヴィーだった。

 

これまで紗幕の降りたキューブの中にいた菅原が、おもむろに2階のソファへと移動(紗幕など視線を遮るものは何もない場所!)。バックライトに照らされて表情までは完璧に見てとることはできないまでも、この移動の演出には客席も大いにざわめいた。いたずらっぽく笑いながら「私も座って歌うから、みなさんも座って聴いてください。みなさんの"視線"のエールを受けて頑張ります」と語りかけると、2023年リリースの「zoo」を披露。スローバラードの切ない歌声に聴き入る。そして再び最新アルバムから、TVアニメ『雨と君と』のエンディング主題歌となった「filled」へ。アップライトベースのやさしい低音とピアノの音が穏やかに響いて、菅原の柔らかな歌声が会場を満たす。続く「アネモネ」では再び3頭の蝶々が客席上を浮遊し、ミラーボールが放射する光と相まって、美しい音世界を構築していく。自宅に招かれたような親近感と、ファンタジックな世界観、その両方を自在に見せるセットリストと演出に心を奪われた。

 

後半はまた菅原は下のキューブに戻り、最新曲と過去曲とを織り交ぜながら、菅原圭独自のグルーヴを体現していく。新曲の「遊霊婚」が引き連れてくる民謡的な和の情緒も菅原の歌声によく似合う。そのリズムが「リミテッド」のシャッフルのリズムへと引き継がれ、それがさらに強く跳ねるようなリズムで放つハイパーな「ordinary」へと続くと、客席でも大きく体が揺れる。続く「ハイセンス=ナンセンス」では菅原の歌声もより強く深く響いた。真守 真人(Drum)、小山尚希(Bass)、金井央希(Keyboard)、小金坂栄造(Guitar,Band Master)とつなぐ見事なソロまわしにも会場中から大きな歓声が湧き起こり、そこからのラスサビの炸裂感は格別だった。

 

後半、特に心に響いたのは「レッテル」。演奏に入る前に、曲が生まれた背景を菅原が語る。この曲は、スタッフからの「菅原圭自身の内面や悩んでいることを曝け出した楽曲のほうが、逆に共感を生むのでは?」というアドバイスをもとに生まれたのだという。曲作りの上で菅原は、幼少期から抱える悩みや痛み、それを誰にも理解してもらえないことへのやるせなさに改めて向き合った。「頑張ってるのに頑張ってないって思われてしまう。信じてもらえないってすごく悲しいことじゃない? つらいことじゃない?」そんな切実な記憶でさえ、どこか明るい口調で話す菅原。だからこそ、普段は見せない傷の痛みをこの「レッテル」という曲で曝け出してみせたのだ。まるで泣いているような歌声、というかこの歌は泣き声そのものだ。ここでこうして自身の感情を曝け出せたことは菅原にとっての大きな変化であり、あるいは救いとなったのかもしれない。ファンに対しても、「信じてくれる人がこんなにいるんだと、1stワンマンをやったときに気づいた」と語り、「そういう方たちになら、私は自分のこの(弱い)部分を見せてもいいのかもしれないと思った」のだと語ってくれた。

 

そのあとの「bitter」は弾けるようなメロディで、どこか懐かしさを感じさせる菅原ならではのポップネスが心と体を揺らす。そしてラストの「サヨナラトウキョウ」でも、心ときめく爽やかな歌声で、菅原圭がネクストフェーズへと進んだことを感じさせた。このツアーが菅原圭にもたらすものは非常に大きいのではないかと確信したツアー初日だった。

アンコールでは改めてメンバー紹介をしたあと、2曲を披露。「(本編で)アネモネを歌ったということは、お察しですよね。あの曲でしょう」と言って始まったのは2022年にリリースされた代表曲のひとつ、「カーテン」。揺らぐ思いを繊細に表現する菅原のファルセットが深い没入感を誘う。そしてラストは同じく2022年リリースの「crash」。陽のエネルギーに満ちたポップチューンが響くなか、気づけばまたもや3頭の蝶々が会場を自由に飛び回っていた。こうしてとびきりポジティブなバイブスを残して菅原は「また会いましょう!」と告げてステージをあとにした。惜しみない拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 

(テキスト/杉浦美恵 写真/Taku Fujii)

セットリスト

  1. mean
  2. ORACLE
  3. 夜の惑星
  4. ライムライト
  5. シトラス
  6. zoo
  7. filled
  8. アネモネ
  9. 遊霊婚
  10. リミテッド
  11. ordinary
  12. ハイセンス=ナンセンス
  13. レッテル
  14. bitter
  15. サヨナラトウキョウ
  16. ec1 カーテン
  17. ec2 crash
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